日出学園の活動日記BLOG

人間と機械(倫理)#08~#15「心理学」編

はじめに

人間とは何か?機械とは何か?人間と機械の今後の関係は?

このような疑問の答えを”探求”する、「情報Ⅰ」と「倫理」の学びを融合した学校設定科目「人間と機械(倫理)」を、日出学園では2023年度からスタートしました(以前は「倫理」として開講)。
4年生(高1)に履修した「情報Ⅰ」の内容を踏まえ、5年生(高2)の選択者が1年間学んでいきます。問題解決以外の視点から情報技術を扱うことは、情報科の学習の上でも効果的であると考えています(科目間の連携については、日出学園情報科を参照下さい)。

本科目では主に「心理学」や「哲学・宗教」の視点から「人間」「機械」の理解を深めていきますが、「人間と機械」について幅広く考えた後は、「心理学」について学びを深めました。本ブログでは、各授業で取り扱った内容を紹介していきます。

#08~#09 「人格」と「感情」の心理学



【本時で扱ったこと】フロイトの力動論(エス・自我・超自我)、交流分析(エゴグラム)、ユングの向性検査
心理学編の最初では「精神分析」について扱いました。「心理学」といって、まずイメージしやすい分野です。授業では実際に「エゴグラム(5つの自我状態(CP、NP、A、FC、AC)を元にした性格診断)」と「ユングの向性検査」を全員で実施しました。またエゴグラムの結果をもとに、統計解析フリーソフトウェアRでクラスタリングを行い、クラスメンバーの分類も試みました。

<生徒の感想>
・自分でもわからない自分の一面や、友達の一面を知ることができたり、話したことがない人との交流の場にもなったと思う。
・ユングの向性検査で自分を数値化したのが面白かった
・エゴグラムを行う前に自分で点数をつけてエゴグラムとの差異で計ることが今までのテストと違って面白かった。
・性格が誰と誰が似ているのかなどグラフにして見るのが面白かった

 

#10~#12 心理学史と「認知」の心理学

  
【本時で扱ったこと】心理学史(ヴント・行動主義・ゲシュタルト心理学)、認知心理学(知覚・記憶)、系列位置効果再現実験、ストループ効果
続いて「これも心理学?」と思われがちな認知心理学を扱いました。「ヒトをコンピュータとして捉える」、まさにこの科目の中心となる分野です。ここでは、単語のリストを記憶し、自由再生を行う「系列位置効果実験」を行いました。実験後には表計算ソフトウェアを用いた解析が必要なので、生徒も少し苦労していましたが、この実験ではほぼ確実に「バスタブ曲線」型の再生グラフを生じさせることができます。「ヒトは皆、共通のシステムで出来ている」ことを実感するのに丁度よい実習です。

 

 

 

 

 

<生徒の感想>
・人間も機械的に物事を処理するところが面白かった
・記憶の仕組みはみんな一緒なんだなって思って面白かったです。
・上手く活用できれば成績の向上に繋がりそう。
・面白いなと感じたけど、実験を受けさせられる側からしたら長くてつらいと思うことも多いんじゃないかと思った。

#13 「発達」の心理学


【本時で扱ったこと】心の理論、認知発達段階説(ピアジェ)、発達理論(エリクソン)、自我同一性形成度チェック
「公共」における心理学では当事者段階のことを詳しく扱いますが、幼児期から老年期までの発達について、「人間と機械」では扱いました。成長の枠組みにおいても、システム的な部分があることを実感してもらいたかった為です。また、自分の成長を客観的に振り返ることは、メタ認知を働かせることにも有用に感じます。アイデンティティの確立についても、実際に自分がどの程度達成できているかを確認するテストを最後に行ってみました。

<生徒の感想>
・自分の幼い頃を思い返したときにめちゃくちゃ納得できて面白かったです。いとこや友達の妹弟の様子を見ていて、「あーだからこれが好きでこれが嫌いなのかー」って理解できました!
・幼児は何が理解できて、できないのか、また何が認識できるのかなどについて分かり、自分もそうだったのかなと思いました。
・権威受容の概要が自分に当てはまっていて面白かった。大人になったときにもう一回やってみたい。
・全て順調に成長しすぎても問題があることが意外だった。

#14「顔認識」に着目する「人間」と「機械」の違い


【本時で扱ったこと】OpenCV、新生児の顔検出、文化圏における表情認識、サッチャー錯視
情報Ⅱでも扱った「OpenCVを用いた顔認識」について、「人間」と「機械」の違いを明らかにする、という観点で実施してみました。

#15 心の哲学2~心とはあらためて何か?~


【本時で扱ったこと】クオリア、「中国脳」仮説、集合的無意識、攻殻機動隊
心理学の各分野を浅く広く扱った後のまとめとして、「心の哲学2」を扱いました。

 


結局のところ、「心」とは何なのでしょうか? 機械に「心」が無いと本当に言えるのでしょうか?
授業はこの後、「心の正体」を更に追求するべく、哲学編に入ります。

 

※実施した心理検査、心理実験については次の書籍を参考としました。
・「新・自分さがしの心理学」(ナカニシヤ出版)
・「心理学実験を学ぼう!」(金剛出版)