学園広報誌「学園通信日出」に寄稿した文章を掲載します。
こんにちは。日出学園中学校・高等学校STEAM科です。STEAM科は国語科や数学科と異なり、学校に1名か2名しか在籍していない教科(美術・音楽・情報・技術・家庭・総合)の集合体で、学校によっては「技芸科」「技能科」という名称で呼ばれています。身も蓋も無い言い方をすれば「寄せ集め」の教科です。そんな私たちの日々の教育内容は、特集を見ていただくと分かる通り、全く一致していません。それではSTEAM科は、相容れない、仲の悪い教科なのでしょうか。
コンピュータのディスプレイは、R(Red)・G(Green)・B(Blue)の3つのLEDが等間隔に敷き詰められてできています。この各LEDが異なる強さで光ることにより、人間の脳の中にさまざまな色が生まれます(赤+緑=黄など)。光の3原色による色表現は、STEAM科の関係性と似ています。
さまざまな色は、R・G・Bの3色が独立だからこそ生まれます。情報科・技術科は問題解決・工学的な視点で作品を創作しますが、音楽科・美術科は問題発見・芸術的な視点で作品を創作します。情報科と技術科でも考え方は異なり、情報科は気楽に試行錯誤する姿勢を大切にしますが、技術科は1つひとつの作業を丁寧に行う姿勢を大切にします。
各教科の学びは独立ですが、STEAM科の授業を受ける生徒たち同士で混ざり合い、それぞれが異なる色で、鮮やかに輝いていく。その姿こそSTEAM科が目標とするものです。一致しないことは、悪いことではありません。情報技術をテーマとしたアニメ「攻殻機動隊」には、『我々の間にチームプレイなどという都合のよい言い訳は存在せん。あるとすればスタンドプレーから生じるチームワークだけだ』というセリフが登場します。これは少し言い過ぎかも知れませんが、私たちの在り方に近いかもしれません。左側の集合写真では武器の代わりに、各教科にまつわるアイテムを全員が装備してみました。
私はよく、「技能教科は背中で語る」と表現します。STEAM科は教師であると同時に、皆がその道の職人です。互いの高い専門性を認め合い、尊敬しあっているからこそ、目標だけを揃えて、無理な一致は図らない。これぞ真の多様性であり、学校教育の目指す理想の一形態とも言えると考えいます。
職人芸に興味があれば、特別教室にいる私たちに、いつでも会いに来てください。一人ひとりが、沢山の技を披露すべくお待ちしています。(STEAM科主任 武善紀之)
日出学園の皆さん、こんにちは。僕は現在、教員南極派遣プログラムの派遣教員として、第63次南極地域観測隊に同行しています。この原稿が配られる頃には、南極観測船「しらせ」に乗って、日本を目指していることでしょう。
長時間の船旅では、揺れに翻弄されながらも毎日のように変わる外の景色を楽しみ、昭和基地に入ってからは、基地の設営支援として建築物の解体や、物資の運搬作業等に明け暮れる日々を過ごしていました。非日常がすっかり日常化してしまい、一面の雪氷や露岩にも驚かなくなりましたが、それでも「ペンギンが出た!」と無線が入ると、カメラを携えて外へ飛び出してしまうことは変わっていません。
派遣期間の大きな目的は、南極・昭和基地と日出学園をZoomでつなぎ、2度の南極授業を行うことでした。美しく魅力的な景色の広がる南極、授業の題材自体は豊富にあります。その中で、僕は「何を」「どのように」日出学園生へ届けるか、届けたいのか。自己への問い掛けは授業前日まで続いていました。
「南極は新しい何かを得る場所ではなく、今までの自分を振り返る場所」とは、ある南極授業登壇者の言葉です。「技術」をテーマに、試行錯誤を重ね、当日は思いのすべてをぶつけた授業が出来たと思っています。
題材の1つとして扱った「衛星通信」の恩恵で、南極派遣中も日出学園の皆さんとは、毎日交換日記を続けることができました。また、有志生徒で構成された 「ひのぺんず」は、僕の南極授業の前に素晴らしいプレ授業を実施してくれました。快く僕を送り出してくれた教職員の皆さんには、本番の授業でも力強いサポートをいただきました。遠く14,000km離れた地で、日出学園とのつながりを、より一層強く感じることができたように思います。1時間の南極授業で、話せることは限られています。伝えたいこと、話したいこと、授業以外にもまだまだたくさんあります。時間の制約も、帰国後にはありません。自分の見聞きした南極・観測隊の様子を、じっくり皆さんと話せる日を楽しみにしています。(情報科 武善紀之)